出産を終えた女性の10人に1人が「産後うつ病」を発症しているという調査結果があるのをご存知ですか?

そもそも産後は、ホルモンバランスの変化から情緒不安定になりがち。涙もろくなったり、イライラしたり、落ち込んだり…産後3日〜2週目までに「マタニティブルー」と呼ばれる生理的な症状が現れ、程なく回復していくと言われています。

しかし産後うつ病の場合は、産後2週目を過ぎても症状が続くのが特徴。抑うつ感や罪悪感が増し、頭痛や食欲不振などの症状が出はじめるなど、悪化の一途を辿ります。

少し前のデータにはなりますが、実際に厚生労働省が2014年度までに実施した調査によると、うつ病などの精神的な不調を訴えた人は初産の場合で産後2ヶ月頃までに多く、中でも産後2週間を過ぎる頃に症状が出るリスクが高いということが報告されています。

期間は短ければ1ヶ月程度。長くなると1年を超えてうつ状態が続くこともあるなど、放っておけば虐待や自殺などの命に関わる事態に発展する可能性もはらんだ「病気」なのです。

それでは、どうすれば産後うつ病を回避することができるのか?
今回は「産後の女性の状態」を紐解きながら、夫と妻それぞれにできる対策をご紹介します。

1、産後の女性は「ネガティブ」になりやすい…

妊娠中は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンが大量に分泌されます。しかしそれが出産とともに激減。代わりに、授乳を促すプロラクチンというホルモンが急増するなど、妊娠期から産後にかけてはホルモンバランスの変化が激しく、ただでさえ情緒不安定になりがちです。

こうした中ではじまる赤ちゃんのお世話は、想像以上に重労働。

産後すぐの状況では体力が戻りきれていない…というのもありますが、はじめの1〜2ヵ月くらいは、昼夜を問わず授乳やオムツ交換を行うことになるなど、どうしても睡眠不足に悩まされます。十分な睡眠がとれていない中では疲労感が増し、思考力も低迷しがち。「赤ちゃんの体重がなかなか増えない」「赤ちゃんが寝付いてくれない」「泣き止んでくれない」「1日中立ったまま抱っこしていなければならない」と、一つひとつが不安に思えてしまうこともあるでしょう。

そこに掃除や洗濯、食事の準備などの生活に欠かせない家事が重なってくると、いよいよ自分のことが後回しになってしまいます。落ち着いてトイレを済ませる、お風呂にゆっくり浸かる、両手にお茶碗とお箸を持って食事を味わう…など、日常の些細なことさえ思うようにできなくなる中、自分の置かれている状況をネガティブに捉えてしまうようなことも出てきます。中には、「赤ちゃんと二人きりでいるのが怖い」「赤ちゃんが可愛いと思えない」など、子育てに対する自信や前向きさを失ってしまうケースもあります。

夫にできること

まず第一に、産後うつになるのは「心が弱いから」ではありません。産後の体調の戻り具合や、産まれた子どものタイプ(よく泣く、なかなか寝ないなど)、一緒に行く時や家事に取り組んでくれる人の有無など、さまざまな条件が重なる中で誰もが陥る可能性があるものです。だからこそ、妻の話をよく聴いて、置かれた状況をよく見ておくことが大切。その中で、涙もろかったり、発言や行動がネガティブだったりすることが続いても辛抱強く寄り添ってください。「死んでしまいたい」「いつか子どもを傷つけてしまうかもしれない」「子どもなんか産まなければよかった」などの言葉が出てきている場合などは楽観視せず、「もしかしたら…」と思うようにしてください。また、物事の良い面を見るように手助けをしたり、明るい未来を一緒に想像出来る状況を創り出すことも大切です。体調が良い時には、負担にならない程度の気分転換をしに外へ一緒に出かけるのも良いでしょう。

妻にできること

「産後の大変さを一人で抱えない」ように心がけてください。家事も育児も気がかりなことはあると思いますが、それらを全部一人で抱え込んでしまうと心や体は簡単に疲弊していきます。母親が元気でなければ、子どもも元気でなくなります。1日の中で「自分のためだけ」の時間を持つことは贅沢なことではありません。ゆっくりお風呂に浸かったり、深夜のオムツ替えを夫に交代してもらって眠る時間を確保したり。リラックスや休息に繋がる時間を確保していけるよう、夫をはじめ、周りを頼ることも必要です。

2、産後は「神経質」になりやすい…

小さな命を育む日々には「責任感」や「緊張感」が伴うもの。意識的であれ無意識的であれ、産後の女性は身の回りのほとんど全てを「赤ちゃんを優先」で考え、動くようになりがちです。そうした中、普段よりも健康面や衛生面に気を遣うようになる人は多いのですが・・・

・家の中が埃っぽくならないように、掃除機や雑巾掛けを頑張ろう
・お風呂場にカビが発生しないように、毎日こまめに拭きあげよう
・良い母乳を出すために、毎食栄養バランスを考えた食事をつくろう
・赤ちゃんの肌着は防ダニのために全部アイロンを掛けよう
・オムツは全部手作りの布おむつを使おう

など、一つひとつ丁寧にこなそうとする中で「完璧にできない状況」に直面し、その度に気に病む人は少なくありません。赤ちゃんの安全や家族の安心を第一に考え、一所懸命に育児や家事に取り組んでいる証と言えば聞こえは良いですが、思うようにできずストレスが爆発することもあります。人によっては、「妻失格、母親失格」などと自分を必要以上に責めたり、夫や祖父母に対して「〜してくれない!」と怒りの矛先を向けてしまうこともあるでしょう。

 

夫にできること

母乳を与える以外のことは、夫にもできます。子どもの親は母親だけではないと自覚し、「家事や育児においてできること」を増やしてください。とはいえ、妻が求めることすべてに取り組む中で、夫がうつになってしまうケースもあるので注意したいところ。妻が気にしていることを無下に扱うことだけはせず、少しでも不安や不満が取り除かれるよう、一緒に考える姿勢を示しながら、できることを増やしていくことが大切です。

妻にできること

赤ちゃんを相手に、「完璧」を目指しても通用しません。重要なこと、緊急なことに目を向け、それ以外のことに掛ける力を加減することが大切です。また、片付けや掃除などが複雑になってしまうもの・ことを生活に取り入れない工夫も良いですね。生活をシンプルに保つことで、余計なストレスを感じずに済むようになります。

3、産後は「孤独」を感じやすい…

赤ちゃんかわいいね!出産おめでとう!…周りから祝福の言葉をもらう一方で、産後は「孤独」を感じてしまう人が少なくありません。

それというのも、産後しばらくは安静に過ごす必要がある上に、生まれたての赤ちゃんを連れて外出することがはばかられるないなど、どうしても「外の世界」が遠くなりがち。授乳とオムツ交換の無限ループと進まない家事に取り組みながら、言葉が通じない赤ちゃんと家で二人きり…誰とも話さずに1日を過ごすことも多くなります。

・大人の会話がしたい。
・誰かと話がしたい。

こうした声が産後の女性から聞かれた時は、人や社会との結びつきが希薄に感じられ、孤独感が強まっている時の一つのシグナルです。

また、夫の仕事が忙しく、出張が多かったり、朝出かけるのが早すぎたり、帰りが遅すぎたりすることで「放っておかれている」と感じ、孤独感を強める人もいれば、延々と泣き続ける赤ちゃんを一人であやしている時に急に孤独を感じる…という人もいます。我が子の寝姿や笑顔に癒されたり、赤ちゃんと過ごす時間の中に嬉しさや楽しさを感じられる場面があったとしても、自分一人だけで育児をしているような感覚や、社会から取り残されてしまったような感覚が蓄積されていくと「孤独」に蝕まれてしまうのかもしれません。

 

夫にできること

人生のプライオリティ(優先事項)を考えてください。妻が孤独を感じたり、子どもや家族の笑顔が失われることよりも優先されることとは何ですか?あまり重要でないことには時間を割かないようにするなど、産後は夫も時間の使い方を見直す必要があるでしょう。妻の支えになるための時間や、家族で過ごす時間を「自分の時間」の中に組み込み、自分を含む家族全員が笑顔で居られる状態を目指すことが大切です。

妻にできること

孤独感が強まると、うつ病が進行する恐れがあります。毎日少しの時間でも外出して、普段と違った景色に触れてみてください。また、出先で大人の人と話したり、電話やメールで周囲と連絡を取り合うなど、外の情報を適度に取り入れてみるのも良いでしょう。かえって「不安や焦り」に似た感情を持ち帰ってしまうこともあるかもしれませんが、そうした心のゆらぎを、身近な夫や友人に打ち明けるなどする中で、気持ちを発散していくことも大切です。

いかがでしたか?

産後うつ病は誰にでも起こる可能性があるとはいえ、こうした情報を夫婦で把握しておくだけで、事態の悪化を防ぐことができます。また、たとえ「産後うつ病」と診断された場合にも、希望を捨てずに「良くなる」と信じて協力し合える夫婦・家族でいられるよう、普段から信頼し合える関係をつくっていけたら良いですね。妻だけ、夫だけ、夫婦ふたりだけでどうにかしようと意固地にならず、上手に周りの力を取り入れながら、我が子にとってより良い子育て環境をつくっていけるご夫婦が増えるよう願っています。

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