3年前までは会社中心の生活で、平日は子どもの寝顔しか見なかった。ある週末、外食店で4人席なのに1対3で向き合ったときは「自分だけ別のようでショックだった」。翌朝、「パパは怒ってばかり」と子どもの気持ちを代弁した妻の手紙が食卓に置かれ、子どもとの関係を見直そうと決めた。仕事の効率を上げ、週に1、2度は定時退社し、子育てや働き方の勉強会や講演会に足を運んだ。仕事との向き合い方で上司とぶつかることもあったが、今は理解も得て、昇進も果たした。

妻は家を守り、夫は仕事に全力投球――。こんな家族像が高度成長期には一般的で、今の40代はそんな父親の背を見て育ってきた。だが今の40代は会社だけの自己実現ではなく、仕事で成果を出した上で別の世界も求める「脱滅私奉公」を公言し始めている。

引用元:2012/3/12付 日経電子版 (【働き方・社会貢献】40代が注目する「パラレルキャリア」 複数の顔持ち、豊かな人生 40代・惑いの10年 一歩前へ)

近年、「ノマドワーキング」「パラレルキャリア」「フリーエージェント」などのワークスタイルを指す言葉が見かけられるようになりました。

こうした働き方を支持しているのは、若者や、妊娠・出産・育児を機に時間制約の中で働かざるを得なくなる人々(特に女性)だけだと思われてきましたが、最近になって「40代」の会社員男性にも、支持層が広がっています。

家庭やその他の生活などの「ライフスタイル」の延長線上にこそキャリアプランはつくられていく。過去から現在にかけて自分が取り組んできた仕事・活動のすべてを「キャリア」と捉えることや、仕事以外の時間も大切にしながら未来に向けて働き方を自分で選び実行していきたいと考える人が増えているのです。

「ライフ」に寄り添う企業

「私は本当は何をしたいんだろう」と自問自答する中、結婚や出産でキャリアを諦める知人を見て、“多様な選択肢から女性が自由にキャリアを築くための支援”に携わりたい自分を発見。同じポリシーを掲げる今の会社の扉を叩く。

(中略)

あとに続く女性たちのためにも、リモートワークを成功させて、多様な働き方の“道を開くヒント”を自らの姿で示したいんです。

引用元:Domani 2016年4月号 【女妻母Catch!働くいい女の「月曜16時」】

雑誌Domaniにて、今月の妻としてインタビューに答えていたのは、株式会社LiB(東京都渋谷区)の松永佐和子さん。

仕事もプライベートも大切にしたいキャリア女性のための会員制転職サービス「LiBz CAREER(リブズキャリア)」を運営する同社で、松永さんはキャリアアドバイザーや人事・PRアシスタントとして働いています。

そんな松永さんの普段の職場は、愛媛県今治市の「自宅」。

月に数回東京本社に出勤することはありますが、基本的に「リモートワーク」というスタイルで業務に当たっています。インターネットとITを駆使し、オフィス(場所)に縛られずに済むとあって、自宅で介護や子育てを行う人や、地方移住を考えている人には魅力的な働き方として注目されています。実際に松永さんも、旦那さんとの間で「子どもがほしいね」と話しているのだそう。家族としての未来を思い描けるのも、働く環境が影響していそうですね。

また、同社には「リモートワーク」の他に「LiBメンバーシップオプション」という複業制度も存在します。

■「LiBメンバーシップオプション」の特徴

1.他社に在籍中もしくは自社を経営中など、他の仕事を持ちながらLiBプロジェクトに参画する「複業」が可能
2.ストックオプションの配布対象者に該当
3.名刺やメールアドレスの発行、オフィス環境や備品配布、会議や研修への参加など全て社員同様の待遇を付与

引用元:2014/10/30付 Value press (”複業”を可能にする新制度「LiBメンバーシップオプション」制度開始。第一弾としてファンタラクティブ代表取締役の井村圭介氏がチーフデザイナーに就任!)

制度を取り入れた背景には、“フルタイム+長時間労働”などといった従来型の働き方では採用できない優秀な人材を確保するという目的があったとのこと。実際にこの制度を使って、会社を経営しながら週4日同社で勤務をするエンジニアも出てきました。能力やヴァイタリティの高い人材ほど、こうした柔軟な働き方ができる職場や仕事内容に目を向ける傾向が高いのかもしれません。

キーワードは「風土」改革

筆者は昨年まで企業勤めをしていましたが、その時に会社から「社会奉仕活動への参加(会社公認の複業)」を命じられていました。その活動は勤務時間内だけでなく、土日祝日返上で行うような内容も含んでおり、それなりにハードでした。ただ、会社公認とはいえ周囲からは「本業以外の活動」としか見られず、問題視されるようなことさえありました。「本業に支障がないように活動しなければ」と常に気を遣う必要があり、窮屈な環境でした。苦い思い出です。

それに比べて、上述した企業には、複業をしている仲間が途中で職場を抜ける際に「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出す風土があります。17時に帰る人が、大きな声で「お疲れさまでした!」と言うと、周りも明るく「お疲れさまでした!」と返してくれる。そんな、「互いの働き方に対する理解に溢れた環境」なのだそうです。(恨み節ではありませんよ^^;)

育児や介護など、時間制約の中で働く人が増える日本社会。政府は、「一億総活躍社会の実現」を掲げ、女性活躍推進法を打ち出し、男性の育児休業取得率の向上を目指すなど、「制度や数字改善」に対する機運は高まりつつあります。しかし、それだけで十分なのでしょうか。結局のところ、「風土」が「働き方改革」を許さないという企業が多く存在します。そのような企業が、働き盛りの人材や優秀な人材の獲得と定着に課題を抱えずに済むはずがありません。

「会社に行くことが楽しい」「ずっとこの会社で働き続けたい」「仕事で前向きになれる」と思える企業はどれくらいあるのでしょうか。そう思われるように努力している企業はどれくらいあるのでしょうか。

「働くモチベーション」というものは、必ずしも仕事の中だけで完結しません。あなたは今、本当の意味でライフとワークを切り分けずに働くことができていますか? もし、周りにここで紹介したような「今までにない働き方」をしている人がいたら、そっと観察してみてください。そうした働き方を理解し、応援することで、あなた自身もまた、ライフとワークを大切にした働き方や生き方が選択できるようになるかもしれません。