家事も育児も言われたことだけ。自分から進んでする気配もない…。そんな夫に悩む妻への「夫を育てる」というアドバイス。
「男はいつまでたっても子ども。妻が育てなきゃ!」「旦那に何を言ってもムダ。褒めて伸ばすのが一番!」「夫は新人と同じ!」など、“子育て” ならぬ “夫育て”を提案する内容に、「そうだよね」と思う人もいれば、「なんか違う」と抵抗感を持つ人も少なくない。
「夫を育てる妻」は目指していない。
かくいう私は独身時代から後者の人間だ。
結婚し、いざ子育てが始まってからは、明確に違和感を持つようになった。というか、一ミリの納得感も無い。「家事を手伝う」「育児に参加する」という言い回しに匹敵するほどの破壊的な言葉と言っても良いだろう。
なぜならそこに、
「対等な夫婦のパートナーシップ」が感じられないからだ。
透けて見えるのは、夫に対する失望や諦め、不信感のようなもの。
そんな言葉を発するようになった背景に胸が痛む一方で、「私は夫を育てるなんて真っ平ごめん」という気持ちにさせられる。
もっと言うなら、妻が家事や育児の主導権を握り続けることを自虐的に宣言しているようで不快なのだ。夫は大きな子どもではない。一人の大人である。妻がリーダーシップを執らずとも、自ら学び成長する力を持っていると信じたい。
とはいえ「夫が自分から動かないのだから仕方がない」という人もいるだろう。
実際に、家のことになると驚くほどに無気力で何もしない夫は存在する。そこまで酷くなくても、やる事なす事的外れだったり、余計な仕事を増やしたり…産後の妻の疲弊した神経を無意識レベルで逆撫でしてしまう夫もいる。この場合、本人に悪気がない分余計に頭が痛い。
そうした中で妻たちが「この人には何を言っても通じ無い」「私が育てるしかない」という思考回路に至る理由も分からなくない。私も産後半年経つ頃に「あなたのそれ(言われて動く)は主体的とは言わない!受動的主体性!」とブチ切れて夫に詰め寄り、無理やり表舞台に引き出そうとした記憶がある。
けれどもそれが、
こうありたい、と思う自分の姿なのか。
心から望む、夫婦のカタチなのか。
そこが重要だ。
対話で解決。「対等なパートナー」であるために。
ここで一つ紹介したい話がある。2015年にハフポストUS版で投稿され、日本でも話題になった3児の父 クリント・エドワーズさんによるこちらの記事。もうご覧になっただろうか。
この間、夜泣きする赤ちゃんをあやしながら夜を明かしたことについて妻と話し合いました。そのとき私はこう言ったんです。「少なくとも僕は、赤ちゃんが目を覚ましたら、付き合って一緒に起きてるよ。こんなことする男そんなにいないよね。感謝してほしいよ」って。
〜中略〜
彼女は、足を組むと私の眼を見つめて言いました。
「そんなふうにいうのは、止めてほしいわ」〜中略〜
「どうして? だって本当のことだろ。僕は他の父親がやらないことをたくさんやってるし、いいヤツだと思わないかい?」
メルは、赤ちゃんを腕に抱いて立ちあがりました。
上の子2人はまだ眠っていたので、起こさないように小声で喋りました。
「そんな言い方をされると、私たちが対等なパートナー同士だと思えないからよ。あなたが夜起きるたびに、あなたのご機嫌をとらなきゃいけない気持ちにさせられるわ。この子はあなたの子でもあるのよ」それから私達はしばらく話し合いをしました。
彼女は私が家事に協力的なのを感謝している一方で、私が何か素晴らしいことをしているような態度を取るのを嫌だと感じていたと話しました。実際私は、父親もすべきことをやっていただけなのです。
知り合いの父親たちが赤ちゃんが目を覚ましても起きない中、自分は夜中に起きて赤ちゃんの面倒を見ている。長年母親がするべきと思われていた家事分担もしている。そんな思いから「父親として平均以上の役割を果たしていることを認めてほしい」と考えていたクリント・エドワーズさん。しかし、そうした夫の考えや態度に「止めてほしい」とNOを突きつけた妻のメルさん。
そこから最終的に「君が正しいよ。僕たちはパートナーであって、夜中に起きたからといって何かすごいことをしたかのように振る舞うべきじゃないね」と謝るまでの夫の気持ちを綴ったこの記事は、子育て中のママやパパを中心に多くの共感を呼ぶことになった。
中でも注目したいのは「それから私達はしばらく話し合いをしました」という部分。
手伝うでも、参加するでも、夫を育てるでもなく、親として夫婦として育児も家事も「お互いにする」。
対話を通じて結論を導き出していったふたりの姿・・・対等な夫婦のパートナーシップを築くことを諦めなかった妻と、その気持ちにまっすぐ向き合った夫の姿が、この記事には描かれている。
ありたい夫婦のカタチに向けて、努力の方向性を間違わなかったのだ。
子育てのカタチも夫婦のカタチも色々。 でも現状の夫との関係に違和感があるならば…
夫とどんな関係を築いていきたいのか。
お互いにどんな夫婦・家族でいたいのか。
諦めたり我慢したり、まして「夫を育てる」なんて方法論に至ってしまう前に、「夫と共にどんな未来を育んでいきたいのか」一度立ち止まってゆっくり考えてみてほしい。その結果「夫育て」が正しい道ならば外野は黙って引き下がろう。
でももし、違っていたならば。
妻であり母である前に、一人の責任ある大人の女性として、自分の心の声をよく聞いて、ちゃんと言葉にしてみる。
その上で夫と向き合う。
自分たち夫婦のパートナーシップのあり方について「話し合う時間」と「少しの勇気」を持つことが、もしかすると今一番あなたに必要なことなのかもしれない。
「夫婦会議」を始めてみませんか?
「夫婦会議」とは、人生を共に創ると決めたパートナーと、より良い未来に向けて「対話」を重ね、行動を決める場のことです。
自分一人の意見を通すため・相手を変えるために行うものではありません。「わたしたちとして、どうするか?」を考える場。特に育児期には、わが子にとって、夫婦・家族にとって「より良い家庭環境」を創り出していくことを目的に行います。家庭は社会の最小単位であり、子どもたちが最初に触れる社会そのもの。大切なことを前向きな気持ちで対話していける夫婦であるために、新習慣として取り入れてみませんか?
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よその夫婦と一緒に「夫婦会議」を始めてみる!
過去の記事
- 「夫を育てる」よりも「夫と育てる」妻でありたい。 2018.06.01
- 脱・産後うつ&産後クライシス!夫は産後の妻の最大のパートナー! 2018.10.08
おせっかい隊:長廣 百合子(ながひろ ゆりこ)
福岡市博多区出身。夫と娘との3人暮らし。Logista株式会社共同代表 CEO。
次世代リーダー発掘・育成を使命に、独身時代は採用支援と人財育成の分野でワーカホリックに生きる。2013年に結婚。第一子誕生を機に「仕事と家庭の両立を巡る葛藤」 に直面し、産後離婚の危機を乗り越えた末、2015年7月より夫の長廣遥と共にLogista株式会社を設立。未来を担う子どもたちのために産後の危機を乗り越え、より良い家庭環境を創り出していける夫婦で溢れる社会を目指し、子どもたちが最初に触れる「社会の最小単位=家庭」に重点をおいた「夫婦のパートナーシップ構築を支援する夫婦会議推進事業」を展開。
夫婦会議ツール「夫婦で産後をデザインする 世帯経営ノート」の開発、「夫婦会議の始め方講座」「夫婦会議の体験講座」の開催、Webメディア「産後夫婦ナビ」の運営などを行う。
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https://www.logista.jp/about-us/