絵本作家・のぶみ氏が作詞を手がけ、だいすけお兄さんが歌う「あたしおかあさんだから」。
Huluで独占配信されて間もなく批判が噴出。中には「感動した」「泣いた」「そんなに悪くない」「事実を歌っているだけ。目くじら立てなくても…」という声もあったようですが、歌詞そのものが物議を醸し続け、早々に視聴停止となりましたね。
では何が問題だったのか。
以下で歌詞の一部を抜粋してみます。
一人暮らししてたの おかあさんになるまえ
ヒールはいて ネイルして
立派に働けるって 強がってた
今は爪きるわ 子供と遊ぶため
走れる服着るの パートいくから
あたし おかあさんだからあたし おかあさんだから
眠いまま朝5時に起きるの
あたし おかあさんだから
大好きなおかずあげるの
あたし おかあさんだから
新幹線の名前覚えるの
あたし おかあさんだから
あたしよりあなたの事ばかりあたし おかあさんだから
あたし おかあさんだから
・
・
・もしも おかあさんになる前に戻れたなら
夜中に遊ぶわ ライブに行くの 自分のために服買うのそれ ぜんぶやめて いま、あたしおかあさん
それ全部より おかあさんになれてよかったあたし おかあさんになれてよかった
あたし おかあさんになれてよかった
あたし おかあさんになれてよかっただって あなたにあえたから
皆さんは、どう感じましたか?
受け取り方は人それぞれにあるかと思いますが、
この歌詞を目にした人の中から
「母親は子どものために我慢すべきと言っているよう」
「母親の自己犠牲を美化している」
「子どもに聴かせられない」
などの声が挙がったのは事実。
他にも、計14回繰り返される「あたしおかあさんだから」というフレーズや「あたしよりあなたの事ばかり」というフレーズに母性神話や愛情の押し売りを感じた人は少なくなく、母親や子どもに対する「呪いの歌」などと言われながらSNSで炎上し続けている状況です。
「おかあさん」だけじゃない「あたし」という存在
ここまでの炎上騒ぎに発展した原因はいくつか考えられますが、そもそもの問題として、「産後のママたちのアイデンティティ」に対する配慮不足が挙げられるのではないかと思います。
それというのも、産後の女性たちは「自分が行方不明」になりがち。
まともに睡眠も取れない中で、泣く子をあやし、オムツを替え、おっぱいをあげ、母乳のことを考えて食事に気を遣い、着るものや身に付ける物も自由に選べず…産んだその日から赤ちゃん優先で過ごす日々。
気がつけばこの歌詞にあるように「あたしより あなたの事ばかり」になったり、「◯◯くんのママ」「◯◯ちゃんのおかあさん」というやり取りの中で「自分が自分でなくなっていくような感覚」や「自分の人格が尊重されていないような感覚」に陥る人も少なくありません。
あたしは確かに「おかあさん」になった。
でも「おかあさん」があたしの全てじゃない。
あたしは………?
この「………」に続く言葉がうまく紡げず、人知れず危機感や不安感を募らせているおかあさんたちがいるという現実。
自分の「好きなこと」や「したいこと」に自信を持って突き進んでいけないおかあさんたちがいるという現実。
「おかあさん」や「ママ」と呼ばれる自分を、違和感なく受け入れられる人ばかりではないという現実。
こうしたアイデンティティ・クライシス(自己喪失)状態に陥っているおかあさんたちの存在に対する想像力と配慮が、この歌詞には圧倒的に足りなかったように感じられます。
「あたし」も「あなた」も大切にしたい。
そうした中で注目したいのは、今まさに乳幼児を育てる現役の「おかあさん」や「おとうさん」たちの動向。
Twitter上で「#あたしおかあさんだけど」「#俺もおとうさんだから」というハッシュタグが出現したり、ブログにあたしおかあさんだからの「替え歌」を載せて自らのリアルな育児を発信したりと、「あたしおかあさんだから」に受けた違和感を払拭し合う動きが続々と出てきています。
たとえばこちらの替え歌には、
「こっちをだいすけお兄さんに歌ってほしい!」
「私もそんな風に生きていきます!」
「ジーンときた!」
という共感コメントが寄せられている模様。(以下、ご本人の許可を得て掲載)
あたしおかあさんだから
これまで以上に好きな服を着て、
大好きなネイルするよいつだっていくつになったって
自分が好きな格好をしていいって、
あなたに知ってほしいからあたしおかあさんだから
これまで以上に楽しくたくさん働くよ働くってなんかおもしろそうだなって、
あなたに思ってほしいからあたしおかあさんだから
これまで以上に自由にのびのび生きるよどんなときも自由に生きていいんだって
あなたに感じてほしいからあたしおかあさんだから
これまで以上に苦手なことは誰かに頼るよひとに助けてって言える強さ
あなたに持っていてほしいからあたしおかあさんだけど
あなたのせいでがまんしたことなんて
いっこもないよって
言えるように生きたい
楽しいことばかりではなく、大変さや難しさを感じることもある育児。
でもそんな日々を振り返った時に「あなたのせいで我慢ばかりだった」と子どもを責めずに済むように。
パートナーはもちろん周囲に上手に力を借りながら、この歌詞にあるように「自分もわが子も両方大切にできる」…そんな「おかあさん」や「おとうさん」が増えて行くことを心から願っています。
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